--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

消える孤独

2012年04月15日 21:43

失踪した人気作家未完の傑作、近日発売!

2009年4月15日

 その奇病は人知れず感染範囲を拡大している。
 調査結果をまとめると、感染者はひとりきりなると徐々に身体が薄れ、やがて無に帰してしまう。人の孤独感を媒介に伝染するその恐るべき病は、一度発症すると完治させる術はない。ただ誰かのそばにいるという対症療法でのみ、生き永らえることができる。
 おそらく、事態に気付いているのは私だけだろう。
 きっかけは、あるネット上の知り合いとの連絡が途絶えた事だった。

(中略)

 人と関わりを持たない者から消えていくため、世間の人々はまだこの病を知らない。この手記が発見されることで、広く認知されることを願う。そろそろ私も「時間切れ」だ。どうやらタイムリミットは72時間らしい。
 もう右手しか残っていな


2010年3月10日

 ある高名な小説家が謎の失踪を遂げた。果たして事件か事故か。
 と言っても、最後に消息が確認できるのは一年前なので、捜査は難航していた。元々人嫌いで家族もおらず引きこもり状態だったようだ。家宅捜索の結果、めぼしい手掛かりは皆無だったが、書きかけの原稿が一篇見つかった。
 刑事という立場を利用して全て読んでみたが、未完とはいえなかなかに面白い。俺はこの作家のファンだったのだ。
 このまま闇に葬られるのはもったいない。俺はそれを担当の編集者に見せ、出版できないかと持ち掛けた。
翌年、奇妙な病に冒される現代社会を描く失踪作家の未完作として、それは大きな反響を呼んだ。


2020年9月3日

 内閣府の設置した特別委員会「大量失踪症候群対策委員会」は2日、全国で多発しているとみられる原因不明の「失踪症候群」について、2009年4月以降行方が分からなくなっていた作家××××氏を確認できる最も古い患者と認定することを発表した。これに伴い、原因究明の重要な資料とされてきた氏の小説のタイトルから「消える孤独症候群」へと病名を変更する。この病気は一定期間他人との接触を断つことで「存在」が消失するとされているが、詳しくは依然推測の域を出ていない。現在、「消失」したと思われる推定患者数は延べ30万人とも言われているが、そのような病は存在しないとする見方の専門家も多い。委員会の提言を受け、政府与党は対応策として国民の独り暮らしを禁止する「独居禁止法」を提出、今国会中の成立を目指しているが、「著しい社会的混乱をもたらす」「そのような病気が存在するという明確な根拠がない」など、野党からの反対は強く、議論は難航している。
スポンサーサイト


コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)



      上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。